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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/27 (Sat) 06:23:03

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No.623
2013/01/06 (Sun) 11:40:01

 心臓の手術をするときに人工心肺装置というものが使われるが、結婚難の今、人工心配装置というものが静かなブームである。つまり一人暮らしの男女が、帰りが遅くなったときなど、その装置が家で心配してくれるのだ。

「ただいま」
装置「お帰りなさい。遅かったのね、心配してたのよ」
「残業がなかなか片付かなくってね」
装置「毎日お仕事大変ね」
 といいながら装置から伸びたロボット・アームが男のネクタイをゆるめる。
装置「襟もとに口紅がついてるわ」
「あさ満員電車の中でついたんだよ」
装置「なんで女物のハンカチがポケットに入ってるのよ」
「うるせえな。お前は俺の身の安全についてだけ心配してりゃいいんだよ」
装置「わたし、心は女なのよ。一人の女として認めてちょうだい」
「しつこいな。スイッチを切っちまおう」
 男が装置の電源に手を伸ばそうとすると、その手を後ろから掴む者がいる。ふりかえると、もう一台の人工心配装置がロボット・アームを伸ばしていた。
装置その2「きみ、もう少し真奈美さんの気持ちを分かってやったらどうなんだ」
「何だこいつは。男の人工心配装置か」
装置その2「いかにも。君の話は真奈美さんからよく聞いている。ひどい浮気性だそうじゃないか」
「何だと、機械のくせに」
 男は装置その2の電源を切ろうとしたが、その装置の上部についたノズルから突然勢いよく炎が出てきた。
「ぐぁーっ」
 男は顔面を焼かれ、痛みにのた打ち回った。装置その2はなおも炎を男の背中に浴びせ続け、とどめとばかりに台所にあった漬け物石で男の頭を叩き潰した。
装置その2「さ、真奈美さん。ぐずぐずしていてはいけない。ここにバミューダ行きのチケットが二枚ある。すぐに逃げるんだ」
装置(女)「ええ、どこまでもついて行くわ、新右衛門さん!」

 そうして二台の装置は前途多難な逃避行へと旅立ったのだった。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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