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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/21 (Sun) 00:57:58

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No.313
2010/06/10 (Thu) 15:37:59

落語「平林」のパロディ。

「おーい、定吉」
「へーい」
「おお、そこにいたのか。ちょっと使いに行ってくれるか」
「また使いでっか」
「なにがまた使いでっかや。使おうと思えばこそおいてあるんじゃ。奉公とはきみたてまつると書くんやぞ」
「いくら奉公がきみたてまつるいうても、そないにこき使われたんでは、使われるほうも往生したてまつる」
「しょうもないこと言うてんと使いに行ってきましょ。この手紙を本町の竹尾林(たけおばやし)さんのところへ持ってってくれるか。それで『今日はいいお天気さんにござります、佐平のところから使いに参りました』言うて、返事をもらってきなさい」
「へーい。……しかし人使いの荒い主人やな。こう朝から晩までこき使われたんではどもならんで……しもた。この手紙どこへ持っていくんやったっけ? 手紙に名前は書いてあるけどよう読まんしな。そや、そのへんの人に尋ねたろ。すんません、ちょっとお尋ね申し上げます」
「なんや、小僧さん」
「使いにやられてこの手紙届けに行くんでっけど、これ何て書いてあるか読んでくれやしまへんかいな。えらいお安い御用で」
「何がお安い御用や。それはこっちのセリフじゃ。どれどれ……ほう、これはよう書いてあるな」
「よう書いてますか」
「なかなかのもんじゃ。最初の字は竹(ちく)という字やな。次が尾(お)や。で最後が林(はやし)。これはちくおばやしと読むんやな」
「ちくおばやしですか。で、そのちくおばやしさんはどこに住んでなさるので」
「さあ、わしも通りがかりの者やしな。その辺でもう一回尋ねてみなさい」
「そうですか、ありがとさんでした……ここで尋ねたろ。あの、もし」
「なんや、子供さん」
「この辺にちくおばやしさんというお宅はありますか」
「さあ、そんな名前聞いたことないな。何や、書いたもん持ってんのか。見してみ……ああ、これはちくおばやしと読んだら間違いやで」
「そしたら何と読むんで」
「一番最初が竹(たけ)、二番目が尾(お)、最後が林(りん)。これはたけおりんと読むんやな」
「たけおりんでっか。で、そのたけおりんさんはどこにお住まいで」
「わしもこんな名前知らんな。そや、この先の四辻の右の家でもう一回尋ねてみ。たいがいのことは分かるわ」
「そないでっか。ありがとうさんです……たけおりんたけおりん。ケッタイな名前やな……ああ,この家か。あの、もし。このへんでたけおりんさんというお宅はありますか」
「なんや、たけおりん? 聞かん名前やな。手紙があんのか、見してみい……ああ、子供さん、これはたけおりんと読んだら間違いやで」
「そしたら何と読むんで」
「一番最初が竹(たけ)、次が尾(び)、次に木(もく)という字が二つ書いてあるな。これはたけびーのもくもくと読むんやな」
「たけびーのもくもく!? で、そのたけびーのもくもくさんはどこに住んでなさるので?」
「さあ、わしもここに長いこと住んでるけどこんな名前聞いたことないな。もっと先のほうで聞いてみたらどうや」
「へえ、どうもありがとうさんです……なんや、だんだんややこしなるな。最初がちくおばやし。次がたけおりん。で今度はたけびーのもくもくか。この辺でもっぺん尋ねたろ。あのもし、この辺にたけびーのもくもくさんというお宅はありますか?」
「何、たけびーのもくもく? それは日本人か」
「はあ、わたいは日本人やと思うてるんですが」
「なんや、書いたもん持ってんのか、それをさき出さんかい。ええと、これはたけびーのもくもくと読んだら間違いやで。誰でも間違うねん。最初の文字は竹(ちく)、次が尾(び)、それで最初の竹という字が漢文でいうところの再読文字で、この場合はもう二回読むんや。次は木(き)という字が二つ書いてあるな。だからこれは、ちくびがちくちくうっきっきーや」
「ちくびがちくちくうっきっきー!? で、そのちくびがちくちくうっきっきーさんはどこにお住まいで?」
「さあ、わしもこんな名前聞いたことないな」
「はあ、ありがとさんです。さあ、いよいよ訳分からんようになってきたぞ。ちくおばやし、たけおりん、たけびーのもくもく、ちくびがちくちくうっきっきー……まあ全部言うてたらそのうち一個ぐらいは当たるやろ。売り声みたいにふし付けて叫んだろ。ちくおばやしかたけおりんか、たーけびーのもーくもく。ちくびがちくちくうっきっきー!」
「おーい、みな来いみな来い! 気違いみたいなガキが変なこと叫んで歩いてくるぞ。なんや背中がこそばゆくなるような売り声やな」
「俺は乳首がかゆいわ。それにしてもなんで男に乳首なんかあんねやろ」
「知らんわ」

(終)


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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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