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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/05/02 (Thu) 07:03:06

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No.39
2009/10/16 (Fri) 00:09:24

(これは、作者が mixi日記にてお題を募集し、「水がめ」「ビニ本」「タイムマシン」の三語をいただいて三題噺にしたものです。)


その海岸には、早朝から釣りをする人たちが集まっていた。当時中学二年生の僕は、母の勤め先のおじさんに連れられ、車でその海岸に向かい、釣りをすることになった。釣りをするのは僕は初めてで、楽しみと言えば楽しみだったが、どちらかというとインドア派の僕はそれほどの期待を抱いてはいなかった。

しかし僕がその海岸に着いてまず驚いたのは、ビニ本、裏本などのポルノ雑誌が大量に、あちらこちらに捨てられていたことだった。当時の僕には刺激が強すぎて、一緒にいる大人たちが男ばかりだとはいえ、それらを拾って食い入るように眺めるという真似はできなかった。大人たちはもちろんそれらを拾って、見て楽しんでいた。「この女、中森明菜にそっくりだな」「いい女だなぁ」当時は、コンビニで見かける成人誌にも、それほど過激な写真は載っていなかった時代だっただけに、それらの写真は僕には衝撃的だった。

さて、釣りを始めることになり、大人たちは僕に釣具の扱い方を教えてくれた。僕は投げ釣りがどうも上手く出来なかったから、近い水面に釣り糸を垂れて当たりを待った。なかなか釣れない。大人たちもたまに小物を釣り上げるぐらいだった。どうも、こういう遊びは自分には不向きだ、家で本でも読んでいたほうがよかったかなと、陽が高くなってくるにつれてぼんやり思った。
「そろそろ引き上げるか」「でもT君がまだ釣れてないぜ」T君とは僕のことである。
「ちょっと待って! 何かが強く引いてる!」僕は叫んだ。大人たちは僕の釣竿をいっしょに持って、獲物を引き上げようとふんばった。水面の底深くから、大きな白い円筒形のものが引き上げられてきた。釣り上げてみると、大きな水がめのような形をしていた。それは大人の人間よりも大きかった。その水がめのような物体は、いまや自らの力で空中に浮遊していた。

水がめの胴の部分が、自動扉のように静かに開いた。まるで土偶のような装備をした、小柄な人間(?)が姿を現した。我々の側の大人の一人が近づこうとすると、その土偶のような生物は手首から白い光線を発射し、足元の岩場が溶けてしまった。威嚇のつもりなのだろう。
「ドゥブブ、ビルクルムリムリ。タベネ、トバラージャー。ヘンドバ」
と、そいつは訳の分からない言葉を発した。話しながら、胸元のラジオのような装置のつまみをくるくる廻していた。まさにラジオのチューニングのときのような音がする。やがてその土偶は
「ワレバレラ。ベ、ブ、ワレワレハ、ミライカラキタ。キミタチトオナジ地球人ダ。キミタチノイウ、たいむましんニ乗ッテヤッテキタノダ。ワレワレハ、古代ノ地球ヲ調査シニ来タ。バー、ビー、ビロヨーン。君ラハ、雄カ。失礼、男性カ」
我々の側の大人の一人が「そうだ」というと
「ナルホド。ケロヨーン。ワレワレノ未来ニハ、モハヤ性別ガナイ。コノ時代ノ男性ヲ一匹、さんぷるニモラッテユク」
といって土偶のような未来人は、光線を僕に向かって発射し、僕は意識を失った。

僕が目を覚ますと、真っ白な部屋の中にいた。ここは先ほどのタイムマシンの中らしい。土偶のような未来人たちは、サングラスのような目で、先ほどの海岸から拾ってきたと思しきポルノ雑誌のページを熱心にめくっていた。そして僕が目を覚ましたのに気づくと
「オイ君、ココニ載ッテイル写真ハ、スベテ女性ナノカ」僕はそうだと答えた。
「イロイロナ姿ノ女性ガイルガ、スベテ生殖能力ヲ持ッテイルノカ」
「なぜそんなことを聞く」と僕が言うと
「女性モ一匹連レテ帰リ、君トツガイニシテ繁殖サセルノダ」
僕はそれを聞くと、ポルノ雑誌をひったくって、いちばん好みに合う女のヌードを指さした。「確実に生殖能力があるのはこいつだけだ。こいつを探し出すんだな」
「ワカッタ」
すると今まで外を映し出していたタイムマシンのスクリーンは灰色に変わり、操縦席の土偶はいろいろなボタンを忙しく押したりレバーを引いたりした。
いきなり、白いタイムマシンの内部に、もう一人の人間が実体化した。
「捕獲完了」
その人間は、まさに僕が指をさした写真のモデルだった。写真よりも色が白く見え、美人だったが、服は着ていた。
「いったいなんなの! ここはどこ!?」
「たいむましんノ中ダ……ダガシカシワレワレハ地球人デハナイ。アルデバラン星系カラ来タノダ。君ラヲツガイニシテ、ワレワレノ動物園ニ連レテ行ク。観客、タクサン来ル。ワレワレ、モウカル。スベテ丸ク収マル」
「収まるわけないでしょ!」女の子は宇宙人の一人をグーで殴った。するとその相手は簡単に参ってしまった。
「お前ら、地球人じゃなかったのか。騙しやがって」土偶たちが意外に弱いのを知って、僕も彼らに殴る蹴るの暴行を加えた。
「ギャー」
「ソレ以上アバレルト、光線銃デアノ世イキダゾ」土偶の一人は銃を構えた。
「なんでこうなるのよ、え、なんで!?」娘は僕に食ってかかった。
「知らないよ」
「ソノ男ガ、オ前ヲ連レテユク女トシテ選ンダノダ」
「何それ!? どういうことなのよ!? 説明しなさいよ!」
「うるせえ、こんちきしょう、ポルノ雑誌なんかに出る女のくせに」
「きー」
「やるか!?」と言って僕は光線銃をひったくった。そして宇宙人の側を向き直り「おっと、みんな手を上げるんだな。おとなしくしな。操縦を代わってもらおう」
「オ、オマエナドニ操縦ガデキルモノカ」
「さっきから見てりゃゲームセンターの宇宙船と同じ要領だ。おい、宇宙人を見張ってろ」と言って、僕は銃を女に渡した。
「地球に帰れるのね」
「ああ、それからこの宇宙人たちを動物園に売って大儲けだ」
「その手があったわね! いひひひひ」
「うけけけけけけ」
それから僕たちは金持になった。宇宙人万歳である。

(終)

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.

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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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