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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/25 (Thu) 19:46:16

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No.536
2012/01/07 (Sat) 14:50:44

 年末年始は本業も休みに入りアメ横での客あしらいに精を出した。
 日本一とも呼ばれるガード下の繁華街での店番だ。
 今年は震災の影響か不景気か分からないけれど、交通整理の警官の拡声は響くものの、思ったより人手は少なかったと思う。
 30日辺りがいつもならピークで全く、人の波が進まなく時間もあるのだが、昨年はそれがなかった。普段の土日よりは多いかな?と感じるくらいだ。

 中国をはじめとして、アジアから来る人々は毎年増え続けている。行儀の悪い連中も比例して増え続けているが、悲しいことにこれは日本人でもあてはまってしまう。

 オーストラリア人の家族連れが店内を見て回ってる間に世帯主らしい恰幅のよいオヤジが自分の処へきて訪ねる。
 「おい、警官はこのパニックみたいな行列について何か言っているのか?何かあったのか?」
 「いや、この国じゃ年の終わりに此処で買い物をするか、この喧噪を味合わないと一年生きた気がしない人が大勢いて、それでこんなに混んでるのさ。ちょっとしたカーニバルと一緒でさっきからポリスが言ってるのは”Keep Left for Traffic!!"」と解説したら
 「ああそうか、この国じゃ毎年なのか?」というから
 「そうさ、Have a Nice Stay! and Happy New Year !」
 「You too!!」などと会話を交わす。

 テレビでイタリア語講座に出ている某イタリア語教師がローマからの家族を伴って店に来た。ソックスやニット帽やら選ぶのを手伝って会計後に
 「回転ずしのおいしい処知らない?」
 と訊かれ
 「すしざんまいじゃ駄目なのか?その人数じゃこの辺りの回転寿司は狭いから座れないぜ!」
 「すしざんまいは昨日行ったから・・・回転寿司を食いたいのさ」
 「じゃ、ガード下を左に折れて何件かあるけど、オススメは大江戸だな、行ってごらん」
 あちこちの国から来る人々とこんな会話を出来るのは、このバイトの余禄だと思えばいい。

 年末に貰う取引先からのカレンダーは何処もシンプルで書き込みのできる大型のものが主流だが、味気ないと言えばこの上ない。
 小生がアパレルへ入った時代にはジェームス・ディーンやマリリン・モンローで、大きさや白黒かを選んで客先に配ったりしたものだ。金沢に移り住み、あるカジュアルチェーン店の店長をしている時もやはり、J・ディーンを買い上げ金額に合わせて顧客に年末の会計時に配っていたが、経営者の意向である年からそれが前触れなく廃止され
 「あんたんとこのジェームス・ディーンがないと壁の色、そこだけ色が違うてるんや・・・なんとかしてや」と叱られた思い出もある。

 元来、ポスターや絵画を屋内に飾るゆとりを持たぬ戦後の人々にとって、絵柄やデザインのついたカレンダーこそは究極のインテリアだったが、各種の技術、経済や趣味趣向の発展変遷によってさほど重要では無くなったのか誠に味気ないカレンダーばかりがと思うが、これも世の習いなのだろう。

 それにしても、前の記事で述べたブルーレイの「グランプリ」は色々と楽しみが多い。
 鮮やか過ぎる60年代のフェラーリF1は当然として、女優たちの纏うファッションや、ホテルやロビーの内装、調度に目を凝らすとなかなかに鮮やかに興味深い。
 紙をめくる画像の楽しみは激減したが、映像の旧きを追う楽しみはまた別か・・・?
 次は「栄光のルマン」でも探しに行こう。


 この時期、東京で抜ける蒼い空を見上げると金沢の雪景色を思い出す。
 年間の降雨日数が196日というこの地にあって、冬の雪も例外でなく、特に年始明けの今頃の雪は日中最高気温が0度からさほど上がらぬため、数メーターの積雪でなくても路上の雪や自宅の各所に積もる雪はなかなか解けない。

 関東暮らししか経験のない自分にとって、この時期の除雪作業はこたえたものだった。
 積雪の重なる日だと、自分の車の雪を下ろしてウオーミングアップをし、駐車場から一般道へ出るのに1,2時間かかってしまう・・・なんてざらにあった。
 通勤途中に卯辰山を周り近道をしたつもりが坂の頂上付近で一時停止をしたら最後、じりじりと坂を逆に下り続け、通りがかったトラック運転手に押してもらって脱出したり、シャーベットが凍ったような積雪の路地でスタックして出れなくなり、近所の人が助けにスコップを持って出てくれたり、数えれば暇がない。
 逆に、自分もそんな風に助けられたからと見ず知らずの人たちを助ける場面も何度もあった。この辺りの経験は「人は相み互い」足りない部分を補い合うことが人間関係の究極であることも思い知らされたし、なによりも自然をなめてかからないスタンスを心に持ち共存していくというスタンスの重要性を金沢で住んだ日々に学んだ。

 東京都心に移り住んでもう10年以上が経つ。
 山手線や東京メトロは携帯の案内通りに乗れば数十分で大概、目的地に運んでくれる。実に楽で快適だ。
 カレンダーの月のページを破るくらいの記憶の断片しか脳裏に描けなくなったが、路上に流れる融雪の水、遠くに降り積もる雪景色と兼六園とともに心のカレンダーを引っ張り出してはスコップがアスファルトを擦る音とともに蘇る。
 ゆっくりと鱗町の交差点から裏の路地へ抜けていく時に感じる湿った寒さの中のあの懐かしさ、柔らかさは絶対に東京では味わうことのできないものだ。

 昨晩からまた冷え込みも一段と増した。
 大陸からの寒気団はこの時期日本海側に居座り西高東低を繰り返す。除雪の合間に空や山間から覗く陽光、雪解けの雫が木々から眩しい光を放つ兼六園の雪吊・・・来る日も来る日も幾度も幾度もそんな景色を目の当たりにして春へと向かう。雪さえ降らなければ良い処、住みやすい町と言ってしまえばそれまでだ。
 だが、人の営みの姿をこうまで教えてくれる街もそうあるまい。
 独特の湿気を伴う心地よい寒さは心地よい水や酒をもたらしてくれる。
 寒いところにはやはり寒い時に訪れるのが一番だとも思う。
 四季の折々で楽しみは尽きないのだけれど。

 春待つ心でカレンダーの1枚1枚を破った頃が懐かしい。



 (c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.




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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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