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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/17 (Tue) 18:43:03

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No.542
2012/01/24 (Tue) 22:18:09

 人工冬眠装置の温度が徐々に高まり、そこに眠っているバイアンズの四人のメンバーが次々と目を覚ました。セカンドの獄目鬼(ごくめき)、ファーストの火戸羅(ひどら)、ライトの鹿羽根(しかばね)、それに控えの外野手だった魔具虎(まぐどらー)。
 監督であるモンスターを除いて、今まで起きて任務についていた四人のうち、六減(ろくふぇる)と零刻苦(れいこっく)の二人が松平に殺され、生き残ったのはショートの牟残(むざん)とキャッチャーの兀奴(ごっど)である。つまりもともと三十名ほどいたバイアンズのメンバーも、今は六人だけが残っていることになる。
 土星の衛星タイタンの大気圏に突入態勢に入った宇宙船ドリムーン号だが、高性能のコンピュータ・ズバットが松平によって破壊された今、モンスターによる手動操縦に頼らねばならず、危機に瀕していた。
 船内が猛烈な熱を持ち始めた。
「船内温度、五十二度。なおも上昇中!」兀奴が言った。
「この船が燃えつきずにいられるかどうかは神のみぞ知る、だな」モンスターがつぶやいた。
 やがて船内の温度は下がりだした。
「よし、ひとまず大気圏突入は成功だ。牟残、外の様子はどうだ?」
「前方に厚い雲が見えます。どうやらその下は嵐ですね。液体メタンの雨と大風が吹き荒れていると思われます」
「松平、こんな窒素とメタンだけの星にあんたの妹さんがいるとはとても思えんがな」とモンスター。
 しかし松平はそれには答えず、黙ってメインスクリーンを凝視していた。そしてふいにブリッジから出て行った。

「監督、ドリムーン号の二番ハッチが勝手に開きました!」
「何? 二番ハッチの映像を出せ」
 するとスクリーンに、サングラスをかけた松平平平がパラシュートを背負って船から飛び降りるのが映し出された。
「あのおっさん、酸素ボンベなしで出てったぜ」兀奴がいうと
「真空の宇宙でも平気だったやつだからな。今後も松平には油断するな」とモンスター。
 やがてドリムーン号は地表に着陸した。モンスターは一同に向かって
「さて、バイアンズの諸君。われわれの任務は、タイタンでのエイリアンの生態系の調査だ。知っての通りエイリアンは危険きわまりない怪物だが、彼らと戦いに行くのではない。やむをえない場合を除いて、エイリアンとの無用な衝突は避けること。いいな。では各自装備を準備。雨が上がったら地表の探索に向かう」

 やがて液体メタンの雨がやんだ。特殊な宇宙服を着て、モンスターとバイアンズのメンバーはタイタンの砂漠を歩いていった。遠くに丘が見え、ひとまずそこを目標地点と定めた。
 二時間ばかり歩いて目標の丘に到着したが、エイリアンの生息している気配はまるでなく、ただセピア色の砂漠が延々と広がっているだけだった。
「ここで小休止しよう」モンスターが丘のふもとで言った。「兀奴、探知機に生命反応はないか?」
「何も反応ありません」と兀奴。「少なくとも松平の反応はあっていいはずなんですが」
「おい、これ何だ?」火戸羅が、丘の側面に出来た断層を注視していた。
「きらきら輝いている……ダイヤモンドじゃないか?」と牟残。「しかもこれは原石じゃない。明らかに人の手が加わっている」
 バイアンズのメンバーは、断層から見え隠れしているダイヤモンドを掘り出そうとしてスコップでつつきまわした。
「これは古い文明があった証拠だ。掘り出す前に写真を撮るから皆そこをどいてくれ」
 モンスターが言ったが、バイアンズのメンバーはダイヤモンドに目の色を変え、掘り出し作業をやめる気配はなかった。
「おいみんな、我々の使命を忘れてるんじゃないか? そこをどくんだ」
「うるせえ」火戸羅がダイヤの大きな塊りでモンスターの頭をぶんなぐった。
「ぐおっ」モンスターは昏倒し、その場に伸びてしまった。

「お前は誰だ?」モンスターに誰かが尋ねてくる。
「俺は、モンスターだ。一つ目の、無敵のモンスター」
「ここで何をしている?」
「思い出せない……ここはどこだ。天国か?」
「天国? 悪魔の毒々モンスターが天国になんか行けるもんか」
「では地獄か?」
 しかしそれには返事がなく、轟々と吹き荒れる風の音が聞こえてきた。
 モンスターは意識が朦朧としていた。どうやら今の声は幻聴だったようだ……そう、俺はエイリアンの探索にタイタンまで来ていたのだった。そして殴られて……。
 目を開けるとそこは暗闇で、息苦しかった。手を伸ばすと壁にぶつかる。どうも棺桶の中にでも入れられているような具合だ。力いっぱい手を上げると、棺のふたが開いた。目に飛び込んできたのは蛍光灯の光だ……。
「モンスター君、目が覚めたのかね?」近くから声がした。
 起き上がってみると、そこは和室で、松平平平がこたつに入ってこちらを凝視していた。
「いやいやいや君が植物人間になってしまったのではないかと心配しておったのだよ」松平が言った。
「ここはどこだ? 日本か?」
「そんなはずないじゃないか、タイタンだよきみ」
「タイタンのどこにこんな家があったんだ?」
「ここは私の妹の家なんだよ。紹介しよう、妹の松平竹子(まつだいら・たけこ)だ」
 見ると松平の隣に、おかっぱ頭をした安倍晋三元総理そっくりの人物がいた。まるで男のような顔だし、男の声で
「はじめまして、モンスターさん。いつも兄がお世話になっております」
 と言ったが、これが松平竹子らしい。
「竹子、お茶を入れてきなさい」松平平平が言うと、その安倍元総理そっくりの女が「はい」と言って席を立った。
「そしてモンスター君、こちらがお隣に住んでいるテッキク君だ」
 見ると、こたつにエイリアンも入っているではないか。そのエイリアンは押し殺したような低い声で
「よろしく、モンスター君」
 と挨拶した。
「ちょっと待ってくれ、あんたエイリアンとどういう関係なんだ?」モンスターがうろたえて尋ねると
「どういうもこういうも、ただの茶飲み友達だよモンスター君。断っとくがこれは愛人じゃないよ」松平は真剣な顔をして言った。
 エイリアンと人間が友好関係を結べるとは……さっきの安倍元総理そっくりの妹といい、俺はまだ夢を見ているんじゃないか? モンスターは何がなんだか分からないというふうに頭をかきむしった。
「これは夢じゃないんだよ、モンスター君。そうだ、テレビでも点けよう」
 テレビに、ドリムーン号を後ろにして整列したバイアンズの面々が映し出された。牟残や兀奴、魔具虎らが、アナウンサーと談笑していた。手にはダイヤの指輪をいくつもはめている。
「さて、タイタンへの探検で巨万の富を得たIRバイアンズのメンバーです。地球に帰還して以来多忙な日々を送っておられる皆さんですが、今日はお忙しい合間を縫って、インタビューに答えていただけることになりました。皆さん宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「さて、本来モンスターさんとタイタンへ探検に赴いていたバイアンズですが、モンスターは不幸な事故に遭って亡くなってしまいました。改めて今のお気持ちをお聞かせください」
「モンスター監督は、一生の恩人です」火戸羅が涙ぐみながら言った。「それが探検の最中、砂漠の流砂に飲み込まれて……必死で助けようとしたんですが」
 バイアンズの六人は、みな涙を浮かべて嗚咽していた。
「思い出した! 火戸羅が俺を殴ったんだ!」モンスターは叫んだ。「畜生、俺を置いて勝手に帰るばかりか、ダイヤに目がくらんで俺を抹殺しようとしたな!」
「へえー」松平平平と竹子はみかんを食べながら無関心そうに言った。
「よし、これからお前らバイアンズのメンバーに復讐してやる! 首を洗って待ってろよ」
 モンスターはみかんを握りつぶしながら叫び、復讐の鬼となることを心に誓ったのだった。


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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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