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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/08/20 (Sun) 16:55:33

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No.541
2012/01/24 (Tue) 00:06:00

「みんな、みんな、いずれはエイリアンに殺されちまうんだ!」バイアンズの控えピッチャー、六減(ろくふぇる)が叫んだ。顔面を蒼白にして、体をがたがた震わせている。
 ここはIR鉄道が派遣した宇宙船ドリムーン号の中。少年野球チーム・バイアンズのメンバーと監督である一つ目のモンスターが、この宇宙船に乗り込み、土星の衛星タイタンに向けて旅立ってから、八カ月がたっていた。目的はタイタンにおいて、エイリアンをはじめとする宇宙生命体の生態系を調査することである。
 リーダーのモンスターは、バイアンズのメンバーをえり抜きの戦士として頼りにしていたが、ここに来て一つの誤算が明らかになった。地球では強心臓の抑えのピッチャーだった六減三蔵(ろくふぇる・さんぞう)が、宇宙病とでもいうのか、極度に神経質になってエイリアンの影に怯えだし、ノイローゼ状態になってしまったのである。
「六減はタイタンにつくまで人工冬眠させておいたらどうですか?」ショートの牟残(むざん)が提言した。
「駄目だ。人工冬眠装置は四つしかないし、その四つは旅の前半の任務を終えたメンバーが使っている」モンスターが言った。その四人とは、セカンドの獄目鬼(ごくめき)、ファーストの火戸羅(ひどら)、ライトの鹿羽根(しかばね)、それに控えの外野手だった魔具虎(まぐどらー)だった。現在目を覚まして任務についているのは、いま発言した牟残、レフトの零刻苦(れいこっく)、キャッチャーの兀奴(ごっど)、それにピッチャーの六減の四人と、監督のモンスターである。モンスターはリーダーという立場からずっと起きてドリムーン号の操作に当たっていたが、バイアンズの八人はタイタンにつくまで、公平に四人ずつ人工冬眠させることになっていた。

「まあ、僕だって六減の代わりに起きて任務につけと言われたら、腹は立ちますがね」
「零刻苦、六減に鎮静剤を飲ませてやってくれ」モンスターが指示した。
 しばらく鎮静剤の効果でぐったりと落ち着いていた六減だったが、やがてブリッジの席を立ってふらりと出て行こうとした。
「おい、どこへ行く?」牟残がいうと、
「展望室にいって頭を冷やしてくる」

 ドリムーン号の中央上部に位置する展望室は、もともと天体観測などのために作られた部屋で、見晴らしが良かった。六減は星を眺めるのが好きというわけではなかったが、居心地のいいしつらえの部屋で、ときどきここに来てひとり物思いにふけるのだった。
 ふと窓の外に目をやると、ドリムーン号の左翼、二号ジェットの上あたりに見慣れぬオレンジ色のものがチラチラと動いているのに気がついた。六減がそちらへ望遠鏡を向けると、信じがたいものが目に入った。サングラスをかけた中年の男が、オレンジ色のTシャツにトレパンといういでたちでそこに立っているのである! 外はもちろん真空であり、宇宙服を着ずに平気でいられる人間などありえようはずがない。さらに観察を続けると、男は傍らに置いたゴルフバッグから一本クラブを取り出し、それを使って左翼の装甲板の一つをはがしにかかったではないか。これはゆゆしき事態である!

「監督、監督!」六減は急いでブリッジに戻り、事の次第をモンスターに話して聞かせた。
「今度は幻覚か? そんなことあるわけないだろう」兀奴(ごっど)が呆れていった。
「念のため左翼をスクリーンに映してみよう」モンスターは言い、メインスクリーンにダークグリーンの広い翼が映し出された。「六減、どの辺だ?」
「二号ジェットの上です」
「何も見当たらんがな」
「さっきは確かにいたんです。宇宙服を着ないで、そこに立ってたんです」
「ま、とりあえず今のところは異常なしだ。もうすこし休んだらどうだ」
「監督、信じてください。確かにいたんだ」

 六減はそういうと展望室に駆け戻って、また望遠鏡で左翼を拡大して観察した。やはりサングラスの男が見える。その男はにやりと笑って、巨大な木づちで船体を破壊し始めた。
「このやろう、ドリムーン号を壊す気か!?」六減が叫ぶと、不審者はそれが聞こえたかのように望遠鏡のほうを見てにやりと笑い、サングラスをはずした。どこかで見たことのある顔だった。そう、あれは政治家の……。
 やがて不審者は電気ドリルで左翼の基部に穴を開け始めた。あんなところに穴を開けられては大変だ。
「ちくしょう、もう好きにはさせんぞ」六減は怒り心頭に達し、もはや分別がつかなくなったのかレーザーガンを展望室の中で発射し、不審者を片付けようとした。
 窓の強化ガラスに穴が開き、たちまち轟音とともに室内の空気が船外に吸い出されていった。六減自身も窓の穴に吸い寄せられ、宇宙空間に投げ出されてしまうかに思われた。
 そのとき、六減の手を掴む者がいて、彼は船内に引き戻された。たちまち非常用の装甲シャッターが下り、空気の流出は食い止められた。六減を助けたのはモンスターだった。
「おい、気を確かに持て! 落ち着くんだ!」モンスターは強い口調で言った。
「……すみません、取り乱しました。判断を誤りました」六減は言った。
「まだ先は長いんだ。しっかり頼むぞ」モンスターはそう言って、六減の肩を叩いた。

「ちくしょう、また負けだ。ズバット、ちょっとは手加減してくれ」モンスターはコンピュータを相手にオセロをしていた。
「これでも限りなく手加減しています、ミスター・モンスター」コンピュータが答えた。
 このコンピュータはドリムーン号のすべての機能を制御する高性能のもので、正式名をZBT7000といったが、乗組員は親しみをこめてズバットと呼んでいた。実際ズバットは感情を持っているかのように振る舞い、ドリムーン号の十人目の乗組員として皆に受け止められていた。
「ミスター・モンスター。ブリッジ横のトイレですが、一番奥の便座のウォシュレットが二時間十五分後に壊れます」
「確かか」
「ZBT7000型コンピュータはこれまで誤りを犯したことがありません」
「よし、六減。修理してきてくれ」
 六減は工具を持ってトイレに入っていった。モンスターは再びズバットを相手にオセロを始めた。

「監督。六減、遅すぎやしませんか」兀奴が言った。
「そういえばそうだな」
 モンスターと兀奴はトイレに行き、六減に声をかけた。返事はない。内側から鍵がかかっていたから、モンスターは体当たりして個室のドアを開けた。六減が泡を吹いて倒れていた。白目をむいている。
「死んでるぞ」
「ええっ。いったいどうして!」

 モンスター、兀奴、零刻苦、牟残はこの問題を討議した。
「このトイレは完全な密室だった。しかし六減は首を絞められ殺されていた。ズバット、どう思う?」
「完全な密室だったというのは誤りだと思います、ミスター・モンスター。通風孔があります」
 画面に、ブリッジ周辺の天井を通るダクトが図示された。それは六減が死んでいた個室の通風孔にも通じていた。
「では、犯人はどこに行ったのだろう?」
「生命反応のありかを調べてみます」ズバットが言うと、
「いや、それには及ぶまい」といってモンスターは槍を持ってきて、天井のあちこちを突き刺し始めた。
「ぎゃー!」
「ここだ、この周辺をレーザーで焼き切れ」
 レーザーを使って天井に穴が開けられると、中年の男が落ちてきた。オレンジ色のTシャツにトレパン姿の男。六減が報告した特徴と一致している。モンスターがその男のサングラスをむしりとると、その顔は麻生太郎元首相とそっくりだった。
「松平!」
「監督、この男を知ってるんですか」

 モンスターは、RS電機陸上部の鬼監督にして蟻濠図帝国(ぎごうとていこく)の使者である松平平平(まつだいら・へっぺい、第四回・第五回に登場)について皆に説明した。
「お前はなぜここにいるんだ」とモンスター。
「いや、生き別れになった妹がタイタンにいてね、たった一人の肉親だ、そりゃあ元気なうちに会いたい、会いたいとも。で君がタイタンに行くと聞いてだね、わしも連れて行ってもらおうと思ったのだよ」
「その男は嘘をついています、ミスター・モンスター」ズバットが冷静な声で言った。
「なんだね、機械のくせに。失敬だぞきみ」松平が言うと、
「ズバットには高性能の嘘発見器が内蔵されている。あんたの脳波や内分泌物や血流を調べてるんだよ」とモンスター。
 すると松平はトレパンの中からショットガンを取り出して、ズバットのメイン画面を撃ちぬいた。
「これで邪魔者はいないというわけだ。わしをタイタンに連れてってくれるね」
「なぜ六減を殺したんだ」
「いやそれは、密航者だなんだと騒ぎ立てるから仕方なかったのだよ。な、昔のよしみでどうかひとつ、頼むよモンスター君」
「じゃあなんで宇宙船の左翼を壊そうとしていたんだ」零刻苦が口を挟んだ。
「そりゃあ穴を開けて中に入るために決まってるじゃないか、若いの」
「なぜ宇宙空間で宇宙服を着ずに平気でいられたんだ」と零刻苦。
「そりゃ陸上で鍛えとるからだよ。しかし細かいことにこだわるねきみも」
「監督、こいつ、宇宙船からほっぽり出しましょうよ。ろくなやつじゃないですよ」
 零刻苦が提言すると、松平はただちにショットガンで彼の胸をぶちぬいた。
「本当の狙いは何だ? 松平」とモンスター。
「だから言っとるだろ、生き別れになったたった一人の妹にひとめ会いたい、ただその一心でだな」
「もういい。宇宙船がタイタンの引力圏内に入る。あんたがコンピュータをぶち壊したおかげで手動で着陸させなきゃならなくなった。兀奴、高度計を見ててくれ。牟残は操舵装置の回路が無事かチェックしろ」

 けっきょく松平平平を同行してタイタンに赴くことになったモンスターとバイアンズ。
 この先どんな展開が待ち受けているのであろうか?


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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