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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
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No.540
2012/01/22 (Sun) 02:31:51

 子供たちが学校の休み時間になるといっせいに携帯電話を取り出し、ゲームをしたりイヤホンをつけて音楽を聴きだす、また電車に乗っていると老若男女問わずスマートフォンなどの携帯端末をいじっている、そんな現象を見ていると、こんご人間はどうなっていくのか、などという壮大な疑問をもつことも多い。

 思い出せば自分が小学校に入ったころに任天堂から「ゲームウォッチ」というのが発売され、それが携帯用コンピュータ・ゲームの最初ではなかったろうか。その後「ファミコン」が普及して、多くの同級生がそれを持つようになり、携帯用ゲームの種類も増えていった。しかしまだみんな「暇さえあればゲームをやっている」という状態では全然なくて、遊びといえば小さな子なら鬼ごっこ、長ずるにつれドッジボールや野球、というふうに体を動かすことが主流だった。いまは子供の数自体も減っているが、外で子供が体を動かして遊んでいる風景がめっきり減ってしまった。まあ昔はみんな体を動かして遊んでいた、などと言っても自分は本を読んでいるほうが好きな子供だったのだが。

 自分の父の世代になると、体を動かして遊ぶというその度合いがより激しくて、父の子供時代の話を聞くと、友達と海で潜る競争をしていて鼓膜を破ったとか、釘抜きを腰に差したまま海に潜ったら浮き上がれなくなって溺死しかけたとか、家の二階から庭に飛び降りたらそこに落ちていた五寸釘を踏んでしまってかかとからアキレス腱まで釘が突き抜けたとか、それらはもはやスポーツとは呼べない蛮行であって、そんな命にかかわるようなことをして日々遊んでいたらしい。

 では父たちは心身ともに健康で長生きしたのかというと、そんなことはなくて、父の兄弟やその周辺の人々はどちらかというと短命だった。前にも書いたけれど六十代で亡くなっている人が多い。もちろん寿命は子供時代の遊び方だけに関わるのではなくて、とくに昔は栄養状態や衛生状態が悪かったことも関係しているはずだが、しかし体を動かすのが体に良いというのにも限度があるのは確かなようで、相撲取りやプロ野球選手などには短命な人が多い。自分の従弟は小学生のころから野球少年で、中学高校と野球に明け暮れ、大人になった今も草野球を楽しんでいるが、長年のバットの振り過ぎでヘルニアに苦しんでおり、医者にはもう治らないと言われているようだ。まあほどほどに体を動かすのが良い、などというのは誰もが思っていることだろうが。

 今の日本人の平均寿命は八十歳前後だ。ほどよく体を動かし栄養のあるものを食べるのが健康に良いらしいが、健康といっても精神の健康もあるし、本当のところ何が寿命を延ばすのか、決定的なことは誰にもよく分からないのではなかろうか。西丸震哉という人は、日本は環境汚染が進んでいてそれは食生活に影響を及ぼし、急速に日本人の健康は破壊され、近いうちに平均寿命は41歳になるであろう、と言ったそうだが、それが二十年ぐらい前の話で、しかし実際にはその後も日本人の寿命は延び続けている。西丸氏の話は極端な例だけれど、学識のある人が根拠あって主張することでも、人の健康に関することはどうも相矛盾する説や反例の多いような説を聞かされることが多く、近ごろは最初から話半分に耳を傾ける人が多いのではなかろうか。

 だから携帯端末に熱中している人が増え、外で遊ぶ子供が減ったのを見て、みな運動不足になって寿命にさわりはしないかと心配しても、やはりどんどん平均寿命は延びて、思い過ごしだったということになりそうな気もする。
(近ごろは放射能という別の大きな問題が持ち上がっているが。)


 しかし携帯端末への人々の関わり方に、寿命は別にしても何か不健全なものを感じるのは確かで、それで目や耳からしじゅう情報を入れる、またその操作が指先だけによってなされる、ということで体には支障がないとしても、精神面、とくに子供の内面にはどうも暗い影を落とすような気がするのである。

 たとえば目や耳から入る情報によって刺激されているのが常態になって、それがなくなると耐えられないという中毒症状は、軽微なものなら誰でも感じたことがあるのではなかろうか。その環境が生まれたときからだと、その中毒が脱すべきものだとも思えず、退屈に耐えるということを知らないで育ってしまう、ということもありそうだ。自分は数年前に大阪の公立中学で酷い学級崩壊を目の当たりにしたけれども、とにかく授業中じっと座っていられない子供たちがたくさんいて、それが見た目には不良少年でも何でもないごく普通の子供たちだけに病的なものを感じさせ、ふりかえると上述のような「情報中毒」が関係しているのではないかと思うのである。つまり手元にゲーム機器などがない状態でじっと座っている、という当たり前のことが退屈で耐えられなくなっているのかも知れない。

 また最近見ている高校生の「大事を大事と思わない異様なまでの天真爛漫さ」も気になっている。学力が低い子達を見ているせいもあるが、明らかに重要な試験でもまったく努力しない、大切な約束をすぐに忘れる、といった傾向がある。昨日から行なわれたセンター試験で、寝坊して遅刻した受験生が相当数いたと報じられているけれど、これも最近の子供たちの心の傾向を示しているのではなかろうか。この「天真爛漫さ」がどこからくるのか、はたして情報過多とどう関係するのかは、どうも心当たりがないのだけれど。


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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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