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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/27 (Sat) 11:37:26

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No.112
2009/10/28 (Wed) 20:10:59

どっかへ 走っていく 汽車の
七十五セント ぶんの 切符をくだせえ
ね どっかへ 走っていく 汽車の
七十五セント ぶんの 
切符を くだせえ ってんだ
どこへいくか なんて 知っちゃあ
いねえ
ただもう こっから はなれてくんだ


これは、ラングストン・ヒューズという黒人によって書かれた「七十五セントのブルース」という詩だそうだ。
無学で朴訥とした、おそらくは五十を越えた人物のセリフのように感じる。
これを読むと何故か亡父を思い出す。ただし父が「無学で朴訥とした人物」というわけではない。

父は個人で建築設計事務所を営んでいた。夜は自宅で図面を引き、昼はヘルメットを被って現場監督に出て行った。
若い頃、気の荒い大工や鳶職人ににらみをきかすため外見に気を配り、煙草を吸い始めたのだと言っていた。だから父の作業着には、煙草のにおいが染み付いていた。
鉄骨の組みあがったふもとで、夏はじりじりと照りつける太陽の下、冬はドラム缶の焚き火のまわりで、父は職人たちの輪の中にいた。そうした工事現場からの帰り道、おそらくは小さな駅の近くだろうか。夕闇の中、上の詩のような人物に父がばったりと出会い、そして唐突に切符代をせがまれたとしたら……と、そんな情景が目に浮かぶ。そんなとき父はどうしたろう? 無視して立ち去ったろうか。いや憮然としながらも、使い古して縁の剥げた革の財布から、黙って五百円札を取り出して渡したのではなかろうか。辺りにひとけのないことを確かめてから……。

「七十五セントのブルース」は僕には、そんな空想を喚起させられる。父を知らない他人様には面白くもおかしくもない空想かも知れないが。

皆さんはこの詩から、どんな情景が思い浮かびますか。

(この詩の日本語訳は、詩人でもある木島始という人によるそうです。)


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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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